日々ラノベを読む珈琲好き

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路地裏に怪物はもういない 感想

どうも、りゃおです

平成終わってすでに3日目ですが、「平成最後を締めくくる新伝奇」こと『路地裏に怪物はもういない』の感想です

路地裏に怪物はもういない (ガガガ文庫)

路地裏に怪物はもういない (ガガガ文庫)

 

あらすじ

平成最後の夏、最後の幻想がはじまる。

一つの時代が終わろうとしている。
高度に発達した文明社会は路地裏の暗闇さえも駆逐し、この世界に幻想の居場所はなくなった。かつて人々が怖れた怪異は、誰しもがネットで正体不明を暴けるものとなった。
そんな幻想の余地がなくなった現代社会で、十代の少年少女を中心に不可思議な現象が起きる。
――乖異。
己が妄執こそが真の現実だと主張する、突如顕れた新たな病魔。現実から乖離し、現実とは異なる理で世界をねじ曲げる現象。乖異によって引き起こされるは、「死者のいない」猟奇事件。導かれるように集ったのは、過去に囚われた三人。
絶えた怪異を殺す少女・神座椿姫。
空想を終わらせる男・左右流。
そして、世界に残された最後の幻想である少年・夏野幽。
一連の事件に「真祖の吸血鬼」の存在を見いだした彼らは、それぞれの理由を胸に乖異とかかわっていくことになる……。
終わる平成。最後の夏。最後の幻想。
旧時代と新時代の狭間に問う、新感覚伝奇小説がここに。

 

感想 

曖昧で申し訳ないのですが、「雰囲気が好き」という作品です

 

言葉選びのセンスが良く、各章のタイトルも含めてとてもオシャレな雰囲気に仕上がっています

『ここに〇〇が完全に成る。』というお決まりの文句も、「キタキタ!」とこちらのテンションを上げてくれていいですね

物語の内容自体も、単純な怪物によるホラーではなく登場人物の内面に焦点を当てた推理ものに近い雰囲気も混ぜ込まれています


主人公の幽がなかなかにいい性格をしています

主人公としてはやや珍しく、遠慮は一切せずにガンガン相手の懐に踏み込むような少しずれた性格です

空気が読めないのではなく、読む気がさらさらないというのが質が悪い(笑)

登場人物どころか読者すら困惑させるレベルの無遠慮さながら、しかし相手のいいところを見つけてすぐにその相手を好きになる姿は不思議な魅力があります

 

圧倒的な強さを誇る相棒・椿姫ですが、頼もしい味方というよりも「椿姫の”力”によって解決することになったら失敗」というリミッターのような役割を果たしています

この椿姫を抑えつつどう乖異を解決するか

その難題に臨む幽の姿が読んでいてとても面白いです

 

乖異事件に関わってくる、過去あるいは現在になんらかの受け入れがたいものを抱えた少女たち

やや奇妙な性格の主人公よりもこの少女たちの方がいくらか共感しやすいです

自身に降りかかった現実を受け入れられず、強すぎる妄執で現実を捻じ曲げてしまうという点も、現実に絶望して生きるのを諦めるのではなく、現実を捻じ曲げてでも自分を守ろうとする姿にはネガティブさだけでなく「生きよう」というポジティブさも感じられます

 

それぞれ現実らしい厳しさを抱えながらも最終的には前を向いて歩きだす

そんな優しさのあるものになっています

 

 

と思うじゃん?

しっかりホラーしてました

最終章入ってから一気にきましたね

それまでは予想外な展開はなく順当に進んできたと思われていたのに、最後にこれでもかと予想外な展開のラッシュです

それまで散りばめられてきた伏線の回収も鮮やかで、思わず「おおう」と唸ってしまいました

本当に見事です

 

最終章は他の章とかなり毛色が異なり、下手すれば鬱々としかねないレベルです

三人称視点での文章でありながら、幽の受け入れがたい事実に対する動揺が地の文にまで反映されているのが臨場感があっていいです

それほどシビアでモヤッとし始める展開ですが、あるキャラクターのブレることのない”有り様”がとても気高く、ここにスカッとしたものを感じました

このキャラクターに影響を受け、自分がなんのために存在しているのかを探していた主人公が答えを見つけるシーン

やっぱりこういうシーンは熱くてたまらないですよね

やや静かで淡々としていながらもしっかりと熱量を持ち惹き込まれるクライマックスに仕上がっています


優しくて、でも厳しくて、だからこそ気高い

そんな印象を受けた作品でした

 

 

こういう雰囲気の作品は結構好みです

似た雰囲気で「ふあゆ」という作品を過去に出しているようですね

ちょっと気になってきたので、読んでみようと思います